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アサヒがカルピスを買収した時のこと

本日の記事を読んで。

1.買収額は当時の国内飲料業界では最大

少し当時のことを振り返っておきます。2012年4月、アサヒグループHDが、味の素から傘下の飲料大手カルピスの全株式を取得しました。買収額は1000億円程度に上るとみられ、当時の国内の飲料業界再編では最大規模でした。

味の素は2012年3月期、連結営業利益が過去最高益になり、今後、調味料など競争力の高い分野への投資を厚くしていく布石としての売却でした。
アサヒの飲料事業は12年12月期の売上高が3427億円、営業利益は165億円。カルピスは売上高が1106億円、営業利益が45億円(11年3月期単独実績ベース)でした。単純合算すると売上高で4500億円、営業利益で200億円を超える規模になります。

カルピスは従来、上場していましたが、1991年から25%弱株式を保有していた味の素との、更なる相乗効果を目指し、2007年にカルピス株1に対し味の素株0.95とする株式交換を行い合計で約843億円を投資しました。

実はアサヒとの関係もこの直後からあり、自動販売機事業を統合し、アサヒカルピスビバレッジを設立しています。そういった意味ではアサヒがいきなり登場してきたのではなく、アサヒも物流分野からカルピスのブランド力を目の当たりにし、当時の経緯になったものと思われます。

2.成熟市場の中、乳酸菌飲料では圧倒的な存在感

当時の飲料業界の規模は、国内市場は成熟しており、2000年以降、年平均成長率マイナス0.2%で推移し、2009年には2兆4,127億円となっています。

その中で乳飲料・乳酸菌飲料の成長率は1.4%ですが、飲料シェア全体の13.2%であり、規模は約3200億円。カルピスのシェアはその30%程度でした。この市場は牛乳系も含まれることを考えると、乳酸菌分野でのカルピスのシェアは圧倒的だったと思われます。

販売チャネル別では、販売単価の下落による自動販売機における市場の縮小が大きく、2010年の販売金額は2005年比で16%の減少となり、1台当たりの販売額も2005年比で12%減少となっています。一方でスーパーマーケットやコンビニエンスストアの小売店市場は比較的堅調で、ほぼ横ばいで推移。

結果として自動販売機事業の効率化を図る動きが見られ、2007年にアサヒ飲料とカルピスが自動販売機事業を統合し、アサヒカルピスビバレッジを設立し、2011年にシェア12位のサッポロ飲料が10位のポッカコーポレーションを買収する等しています。やはり、この分野は物流コストの削減がポイントでした。

3.EBITDA倍率は15倍だが、ブランドエクイティを勘案すれば妥当

当時のバリュエーションですが、カルピスは2011/3期の営業利益は45億円。上場していた時の減価償却費は概ね25億円であったことを考えると、設備を維持しているのであれば今回もEBITDAは営業利益45億円+減価償却費25億円 = EBITDA 70億円と思われます。

よって、EBITDA倍率は1000億円÷70億円 = 14.28倍。当時のM&Aで考えれば、かなりのプライスということになりますが、乳酸菌飲料でほぼ一人勝ちだったカルピスブランドを手に入れることのメリットを評価したと言うことなのでしょう。

一方で味の素のカルピス株の簿価は843億円なので、若干150億円程度の売却益が出ることになります。

過去にも、アサヒはハウス食品の「六甲のおいしい水」カゴメの「六条麦茶」を買収し、自社の飲料分野で足りないピースを埋めて来ました。このような他社ブランドを取り込むノウハウも持っているアサヒに買収されることにより、更にカルピスブランドに磨きをかけることが目的でした。

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